国内には多くの救急外来や救命救急センターがありますが、それぞれ規模などによって役割は異なっています。軽症患者を扱うのが初期(1次)救急病院、手術や入院が必要な重症患者の治療を行うの2次救急病院、生命の危機が伴う重篤患者を受け入れるのが3次救急病院です。救急医が1人で24時間365日救急対応をするのは不可能なので、多くはさまざまな診療科の医師が、交代で夜間や休日に当直勤務を担っているのが現状です。そのため、例えば心臓病の患者を救急で受け入れようとしても、その日の当直医が消化器外科医しかいなければ受け入れは難しいということになります。全国で救急患者の「たらい回し」の問題が起こる背景には、こうした事情があるのです。ただ、救急治療室を開設する医療機関が増えています。自分でやってくる軽症患者から救急車で運ばれてくる重症者まで、あらゆる患者を受け入れてくれます。「吐き気がするので医療機関を受診したら脳出血だった」「腰痛があり、検査を受けたら心筋梗塞を起こしていた」などというケースもあります。救急治療室で働く救急医は、こうした診断も正確に付けられるよう、訓練されています。救急治療室では通常手術などは行わず、専門的な治療が必要とされた場合は心臓外科や脳外科といった専門医に患者を引き渡します。救急治療室は、もっと増えていくとみられています。「イメージがよくなる」、「さまざまな患者に対する治療経験を積め、医師が集まりやすい」など、開設の理由はさまざまですが、患者にとってはいざというときに受け入れてくれる医療機関が増えるのであれば安心です。